こんにちは、おぐりんです。「コワーキングスペース」と聞くと、どんなイメージを思い浮かべますか?多くの場合、それは“机を借りて作業する場所”。けれど実際には、「コー(共に)ワーキング」が起こりにくいのが現状ではないでしょうか。私は、むしろそこに教育的な意味や、地域に根づいたシェア文化の可能性を見ています。働くためだけの空間ではなく、人と人が出会い、学び、共鳴することで地域全体の未来を変えていく。そんな空間こそ、これからの時代に必要とされる「コワーキング」なのだと思います。儲かるかより、誰と出会うかコワーキングスペースは、収益を求めると難しさが伴います。立地が良ければ家賃は高くなるし、ドロップインでは安定収益につながりにくい。だからこそ多くの施設は、シェアオフィス的な形に寄っていきます。でも本当の価値は、「そこで誰と出会うか」にあるはずです。収益モデルではなく、出会いのモデルとしての設計。その視点に立つと、コワーキングは教育や地域との接点を持ちうる“場”になるのです。出会いは、キャリアの成長や事業のアイデアにつながるだけではありません。異なる価値観と触れ合うことで、思考の幅が広がり、時には生き方そのものを見直すきっかけにもなります。だからこそ、誰と出会えるかを重視した空間設計が求められているのです。無料だからこそ生まれる学び私が訪れた「QUINTBRIDGE」(NTT西日本運営のオープンイノベーション施設)は、とても印象的でした。基本的に無償で使え、イベントも無料で開かれる。だからこそ“ふらっと立ち寄れる”余白がある。偶発性は、余白からしか生まれない。そう思った瞬間でした。セミナーや交流が自然に起こり、そこでまた新しい発想が芽吹いていく。その循環をつくるために、収益よりも「開かれていること」を優先する設計が必要なのだと思います。そして重要なのは、こうした余白が「教育の機会」と直結することです。偶然隣に座った人との会話から、新しい分野を知ったり、異なる仕事の進め方を学んだりする。学校では教わらない学びが、こうした“開かれた場”で自然に芽生えるのです。色で集まり、属性で分散する私が運営する「nukumo house(多家族シェアハウス)」でも大切にしてきたのは、“色”は共鳴させ、属性は分散させることです。つまり、コンセプトに共鳴する人が集まりながらも、職業や背景はできるだけバラバラにする。そうすることで、多様性が保たれ、想像もしなかったコラボレーションが生まれる。教育的にも、互いの存在そのものが学び合いになるのです。たとえば、マーケターとエンジニア、教師とデザイナー、農家とスタートアップ経営者が同じ場に集う。すると、普段なら交わらない視点や課題意識がぶつかり合い、新しい解決策やユニークなプロジェクトが生まれる。多様性は学びを深め、創造を加速させる燃料なのです。共鳴モデルという持続可能性短期的に利益を上げるのは難しいかもしれません。けれど、中長期の視点で見れば、そこで生まれた交流から新たな事業や協働が育っていく。私はその設計こそが、持続可能性の鍵だと思います。つまり、コワーキングスペースは“稼ぐための場所”ではなく、“共鳴をためる場所”として機能するのです。もちろん「稼がない」というのは「無償で全てを提供する」という意味ではありません。むしろ、短期的な利用料収益に縛られるのではなく、共鳴から生まれる中長期的な成果を収益源とする発想が必要なのです。例えば、場で出会った人同士が協働事業を立ち上げ、その利益の一部がコミュニティに還元されるような循環。これこそが本当の意味での持続可能性だと感じます。教育×空間の可能性は、これから「文化とは、忘れられた価値観を日々思い出させてくれる仕組みである。」──ダニエル・コイルコワーキングスペースもまた、そんな文化を支える仕組みになれる。日常的に集い、交流する中で、「学び」や「信頼」や「起業の種」が自然と育まれていく。たとえば、地域の子どもたちが大人の働く姿を間近で見る。学生が社会人と一緒に学ぶ。退職した人が知識や経験を若い世代に共有する。そうした光景は、コワーキングスペースが“教育の場”として機能する未来を想像させます。コワーキングは単なる作業場所ではなく、“時間と共感をシェアする場”へと進化できるのではないでしょうか。私たちが「稼ぎ」ではなく「共鳴」を基盤に据えたとき、その場は地域の文化や教育を支える大切な拠点となるのだと思います。