こんにちは、おぐりんです。「人を増やせば、うまく回る」──そんな空気感に違和感を覚えたことはありませんか?もちろん、チームが忙しくなったり、納期が迫っていたりする時、人を増やす判断そのものは自然なものです。でも、経験を重ねる中で感じるのは、“人数=成果”とは限らないという事実です。むしろ、人数を増やすことで組織の複雑性が一気に上がり、期待していた効果とは逆方向に進むケースも珍しくありません。人を増やす前に立ちはだかる「見えない壁」僕自身、ある企業の大規模プロジェクトに関わった際、こんなことがありました。クライアントは「納期が厳しいから人を増やしたい」というご相談でした。でも現場を見てみると、進行が滞っている原因は、実は“人の数”ではなかったんです。そこには、役割の重なりや認識のズレ、意思決定の曖昧さといった「構造的なボトルネック」が存在していました。つまり、仕組みが整理されていないまま人が増えることで、むしろ混乱が加速する状況だったんです。新たに加わった人に仕事の背景を説明したり、判断基準を共有したりするにもエネルギーがかかります。それを「教育コスト」として捉えれば当然ですが、リーダー側もその工数を見誤ると、かえって既存メンバーの負担が増える結果になるんですよね。人数が増えると、関係性の設計も増える人数が増えるというのは、それだけで新たな関係性が生まれるということです。そこには、情報の受け渡しや意図の共有、期待値のすり合わせといった“目に見えない調整コスト”が発生します。これを軽視すると、誰も悪くないのに、チーム全体の動きが鈍くなることがあります。人が増えると、単に一人ずつがリーダーと繋がればいいという話ではありません。横のつながり、つまりチーム全体としての“関係性の網目”が複雑になっていきます。結果として、情報伝達のスピードや精度が落ちたり、認識のズレが頻発したりするのです。だからこそ、僕はいつも「今この構造に、誰がどんな意味を持って加わるのか?」という問いを立てます。単なる人材配置ではなく、“関係性の設計”という視点が欠かせないと感じています。チーム拡張の前に問うべき3つの視点特に大事にしているのは、次の3つです。役割が言語化されているか?新しく加わる人の“強み”や“やりたいこと”と接点があるか?今のチームは、自分たちの状態を正直に把握できているか?この3つが揃っていないと、人を迎えることが“足し算”ではなく“引き算”になるリスクがあると思っています。特に3つ目は見落とされがちですが、「いまの自分たちは本当に新しい人を受け入れる余白があるのか?」という問いは、とても重要です。業務的な余白だけでなく、心理的な余白も含めて考えたいところです。「人数の掛け算」が起こる瞬間とは?一方で、「これはいける」と思えるときもあります。それは、仕組みがある程度回っていて、「このピースにこの人が加わったら、加速度的に良くなる」という“ブーストのイメージ”が湧く時です。人数が単に増えるのではなく、エネルギーが乗る構造になっているとき、チームは本当に面白くなります。その「掛け算」が起きる構造には、いくつかの特徴があります。すでに言語化された共通言語がある新しい人が参画しても価値観のズレが起きにくい土壌がある誰かがつまずいた時、責めるのではなく支える文化があるこれらが整っていると、人が増えることで関係性の網目が太くなり、それがまたチーム全体の推進力へと転化していきます。人を増やす前に、整えるべき“器”つまり、大事なのは「何人いるか」ではなく、「いまの構造は、エネルギーを受け取れる状態か?」ということ。人数を増やすという選択は、いつだって希望と同時に副作用を伴います。だからこそ、焦って決めるのではなく、いまの構造と関係性に丁寧に目を向けることが大切なのではないでしょうか。「人が増える」ことは、時にチームの文化や空気感さえも変えてしまいます。それは悪いことではないけれど、無自覚に起こる変化は、時として信頼のバランスを崩す原因にもなります。だからこそ、“整える力”が必要なんだと思います。最後に問いかけたいことあなたのチームは今、誰かを迎える準備ができていますか?それとも、まず整えるべき“構造”があるのかもしれません。「いま人を増やす」という判断が、チームにとってどんな意味を持つのか。一歩立ち止まって、そう問いかけてみることから、次の物語が始まる気がしています。